【感想】 屍者の帝國 作:伊藤計劃 × 円城塔
 【あらすじ】
 19世紀末――かつてフランケンシュタイン博士が生み出した、死体より新たな生命「屍者」を生み出す技術は、博士の死後、密かに流出、全ヨーロッパに拡散し、屍者たちが最新技術として日常の労働から戦場にまで普及した世界を迎えていた。卒業を間近に控えたロンドン大学の医学生ジョン・H・ワトソンは、有能さをかわれて政府の諜報機関に勧誘されエージェントとなり、ある極秘指令が下される。世界はどこへ向かうのか? 生命とは何か? 人の意識とは何か?若きワトソンの冒険が、いま始まる。

 【前書き】
 若くして無くなった伊藤計劃の未完の作品を盟友である円城塔が受け継いで書かれた作品。伊藤計劃によって書かれたのは序章のみ。
 ちなみに、イギリスの小説(イアン・フレミング、H・G ウェルズ、コナン・ドイル、シェイクスピア、ブラム・ストーカー)とメタルギアソリッドを読んでいるほうが楽しめると思う1冊。

 【感想】
 序章以外完璧に円城塔作品です。本当にありがとうございました。
 所々、伊藤計劃の息吹を感じるものの理論展開は円城塔そのもの。
 音楽的表現を用いればスタッカートのような軽快な言葉遊びを用いながら理論展開していく伊藤計劃の良さが、アラルガンド(だんだん強く遅く)の円城塔の理論展開に押しつぶされている。伊藤計劃は本当に死んだんだなとある意味痛感させられました。
 登場人物の造詣においても、過去作品を読んでいると繋がる部分が見えそうなだけに残念。
 逆に円城塔作品として見ると、作りが荒い。
 この人の上手さは数学的証明な理論展開にあるのが、中途半端な活劇によって消されている。
 分かりやすく言えば、円城塔が秀才型の作家だとしたら、伊藤計劃は天才型の作家なので混じりあわない。(だからこそ2人は盟友だったのかもしれない)
 それでも最近のSF作品としては秀作以上なので気になった方はお手に。

 

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